木の事典 ホオノキ 氤。「」、・ヲァ 第1集第1巻もくじ ホオノキの概要 ホオノキと文学・伝説 飯を盛る葉 材の組織と性質 ホオノキの利用一般 材の特殊な用途 (写真)ホオノキ樹咨・壮齢木樹肌・果実 ( 力 )ホオノキ丸太・花・枝葉 (顕微跼写真)材の構造 コブシ 氤。「」、 コフシの名称 コフシの概要 材の組織。性質と利用 (写真)コプラ樹姿・樹肌、キタコフシ樹肌 (ノ厂)コプラ花・果実 (顕微鏡写真)材の構造 ハリギリ 氈@ハリギリの概要  戸クダう 。 材の組織と性質 「 オニセンとヌカセン 、 材の利用、とくにセン合板 ○ 下駄棒 ・(写真)八Uギリ樹姿一樹肌 ヲ(力)y・Jギリ樹幹の刺・枝葉 ァ(力⊃ケハリギリ・キレハハリギリ      ゴリラ ィ(顕微鏡写真)材の構造 トチノキ 氈@トチノキの概要  とちの実 。 材の組織と性質 「 材の利用 」(写真)ポッカトチノキ、壮 、(刀)トチノキ果実・花 K I EW 1 7935 ミヤ 高齢木樹肌 ・(顕微鏡写真)材の構造 トチノキ属の樹木 氈@マロニエの並木 (写真)マロニエ樹姿・枝葉と果実 。(力)アカバナアメリカトチノキ花、ベニバ      ナトチノキ花 シナノキ 氈@シナノキの概要  マダの皮 。 材の組織と性質 「 材の利用、とくにシナ合板 」(写真)シナノキ樹咨、若木・高齢木の樹肌 、(刀)シナノキ花、未熟果実 ・(刀)シナノキ枝葉、ヘラノキ枝葉 ヲ(顕微鏡写真)材の構造 オオバボダイジュ 氈@刀カシナとアオシナ (写真)オオバボダイジュ樹姿・樹幹一樹肌 。(刀)枝葉、ノジリボダイジュ樹姿一樹肌 「(顕微鏡写真)材の構造 シナノキ属の樹木 氈@ボダイジュとリンデン (写真)ナツポダイジユ樹姿・樹肌・並木 。(力)アメリカカジノキ樹咨、ボダイジュ樹      姿・枝葉と果実 イヌエンジュ 氤。「○ イヌエンジュの概要 材の組織と性質 材の利用 (写真)イヌエンジュ樹遐・樹肌・花 (顕微鏡写真)材の構造 キハダ 氈@キハワの名称  ギハダの概要 。 だらにすけ 「 材の組織、性質と利用 」(写真)キハダ樹姿・樹肌 、(ノノ)キハダ若木・壮齢木の樹肌、植栽 ・(刀)キハダ枝葉、オオパノキハダ枝葉 ヲ(顕微鏡写真)材の構造 マカンバ 氈@マカンバの名称  マカンパの概要 。 材の組織と性質 「 材の利用 」 合板と硬化積層材 、(写真)マカンパ樹姿・樹肌・若木の林 ・(刀)マカンパ枝葉・樹林 ヲ(顕微鏡写真)材の構造 ダケカンバ 氈@ダヶカンパの概要  高山の風物 。 材の組織、性質と利用 「(写真)ダヶカンパ樹姿・樹幹・樹林 」(ノノ)ダケカンバ若木・壮齢木・高齢木の樹肌 、(力)ダヶカンパ枝葉一丸太 ・(顕微鏡写真)材の構造 シラカンバ 氈@シうカンバの概要  白樺の林 。 材の組織、性質と利用 「(写真)シラカンバ植栽林・樹肌 」(力)シラカンバ花穂・花穂をつけた樹姿 、(顕微鏡写真)材の構造 ミズメ 氤。「」、 ミズメの概要 ミズメの名称と万言 材の組織、性質と利用 (写真)ミズメ樹遐・樹肌 (刀)ミスメ枝葉 (顕微鏡写真)材の構造 カバノキ属の樹木 氤。 外国のカンパ (写真)ヤエカワカンノN樹姿・樹肌一枝葉 (刀)オウシウシうカンパ樹肌・枝葉と果実    レッド・パーチ樹肌 力刀 ぐぐ 「」 )ス子一卜・バーチ樹咨・樹肌 )スイート・バーチ樹肌、オノオレカン  バ・イエローバーチ・レッドパ一手・  ウラジロカンパ枝葉        かなえ書房@ 木の事典 ホオノキ              訂αg71 o加むa Thunberg ホオノキの概要 ホオノキは古くはホオガシワと呼ばれ、漢字では朴、厚朴、浮爛羅勒などをあてることかおり、 学名は訂a即ia obovata T川J四皿价マダノリア・オボバータ)である。英名にはJapanese cucumber treeがあてられる。モク冫ン科に属する落葉高木で、大きいものは高さ30m、直径 1mくらいにもなるが、ふつう50cmくらいまでである。幹は真っすぐに伸びていることが多く、 樹皮は滑らかで裂け目が少なく灰白色を呈するので、見るからに素性のよい樹という感じを与 える。葉訌日本産の広葉樹のうちでは一番大きい方で、長さが20cm力ヽら50cmもある倒卵形の見 事なものが枝先に群がりついて拡がっている。葉の縁には鋸歯(きよし)がなく、上面は深緑色で あるが下面は粉白を帯びていて、風にひるがえるとその白いのが遠くからでもよく目につく。 花もす二ぶる大きく、盃形をしていて直径20cmもある。 5〜6月頃に新しい枝の頂上に開いて 芳香かおる。赤味を帯びたがく片が3枚、その上に6〜9枚の厚ぼったい乳白色の花弁が拡が っている。これが後には黄色がかつてくる。花の中央には多数の雄しべが密接してらせん状に 並び、その中心に多数の雌しべが楕円形の花軸の上に瓦状に接在している。果実はその雌しべ 群が受精して熟しか集合果てあるが、全体は針葉樹の球果のような面白い形をしている。長さ が10〜20cm、直径4〜8Cmはどの楕円形でやがて紅色に染まり、10月頃開裂して緋紅色の仮種 皮で被われた種子が顔を出匸それが白い糸でぶら下がるようになる。南千島から北海道、本 州、四国、九州にわたって広く分布し、山間の肥沃な処に散生しているのがふつうに見られる。 木材としては北海道以外ではまとまって出ることは少ない。 また現在は全国的に見ても蓄積も 本材生産量も多くない。                            (平井信二) K 2 E W 2 7935 かなえ書房@ 木の事典 ホオノキ              Magn oろoむa Thunberg ホオノキと文学、伝説 ホオノキは樹が真っすぐで形よく葉も花も大きくて目立つので、古くから一般によく親しまれて おり詩歌に多く詠まれてきた。万葉集に次の2つの歌がある汗わがせこが捧げて持てるほばが 凵よあたかも似るか青さ盖(きぬがさ)」(僧恵行)と「皇祖神(すめろぎ)の遠(とお冂卸代 御代はい布(し)き折り酒(き)飲みきといふぞ此厚朴(ほほがしわ)」(大伴家持)とである。 前の歌から日傘にさしていかにも清々しい様子がうかがわれ、後の歌からは大きなホオノキの 葉を折り敷いて腰をおるし酒を飲みかわしたおおらかな古代の風景が浮んでくる。 また夫木和 歌集には「みちのくのくりこま山のはヽの木の枕はあれど君が手枕」というのがある。 俳句の季題には朴の花、朴落葉などがあり、「我魂のごとく朴咲き病よし」(茅舎)、その茅舎の 追憶句に「示寂すという言葉あり朴散華」(虚子)、また「岨高く雨雲ゆくや朴の花」(秋桜子)、  「朴落葉枝と訣るる声耳に」(風生)などその生態を目のあたりに浮ばせる多くの句がある。 ホオノキに関連した古い伝説に次のような話がある。「天竜川を遠くさかのばった遠江と信濃の 境にあたるところに京丸という処かおる。険峻な山で全く隔絶された桃源境であって、下の里 人では誰も行了たものがない。時々蓮華のような大きな花びらが下流の里に流れてくることが あって、これを京丸の牡丹といっている」というのである。二の京丸の牡丹はキョウマルシヤ クナゲだという説もあるが、それはホオノキだというのが牧野富太郎博士の説である。                                       (平井信二) K 3 E W 3 7935 かなえ書房@ 木の事典 ホオノキ 。             Magn o加むa Thunberg 飯を盛る葉 人間は原始の時代からいろいろな食べ物を手近にある植物の大きな葉に盛って食べることを行 ってきた。それがもとで今に残っている民俗は西欧ではとうにほとんど失われてしまったと思 われるが、アジアの諸民族、またわが国でも今に至るまでその形がいろいろな処に現われてい る。わが国では古代にはホオノキ、トチノキ、カシワ、アカメガシワ、フキのような大きな樹 や草の葉に食べ物を載せたり包んだりしたと思われるが、今もって全国的に広く行われている のはカシワ、サルトリイバラの葉に包んだ柏餅である。 またそれほど一般的でなくても地方地 方で山里に近い処で葉に食物を盛るいろいろな民俗が残っている。ホオノキの葉を使う代表的 なものは田植えのときの民俗で、これは全国に広く分布しており、多くの例を倉田悟博士が採 集されている。それによると東北地方から山陰にかけての裏日本に殊に多く、例えば炊きたて の御飯を握って塩味のある豆の粉をかけてホオ葉で包むとか、若葉に粽(ちまき)にして包ん で蒸すとかが行われる。津市付近での例では田植えの始めの日に、家の主人がホオノキの小枝 を頭上にかざして田に行き、早乙女たちがその葉を1枚1枚ちぎり取ってそれに御馳走を盛り 食べるという。 また中部地方から西にかけて見られるのは端午の節句にホオノキの葉で包んだ 柏餅である。このごろの観光ブームにのってよく知られるようになったのは飛騨の高山の朴葉 みそ、朴葉ずし、朴葉にぎりなどで、さわやかな朴葉の香り力1移って特別の風味があるという。 飛騨では家に1株のホオノキがあればそれが財産の1つのように考えられていた。また高山で 朝市に乾燥して東ねた朴葉が売り出されるのも名物になっている。       (平井信二) K 4 E W 4 7935 かなえ書房@ 木の事典 ホオノキ 「             Magnォ o陥むα Thunberg M 1 材の組織と性質 ホオノキの材は辺材と心材の区別が明瞭で、辺材は幅が比較的狭く灰白色を呈し、心材はくす んだ灰緑色で他に似たものがない独特のおちついた色調をもっている。横断面で見ると道管の 孔がおおよそ均等に分布している散孔材で、全体に均質でまた緻密であり、さらに広葉樹材のう ちでは木理も通直な方である。 しかし重さ硬さはむしろ軽軟といった方に入り気乾比重は0.49 程度なので、加工はきわめて容易である。含水率1%あたりの平均収縮率は接線方向で0.25% 程度でこれも広葉樹材では小さい値であり、放射方向の1.7倍だから両者の間の差も少ないの で、割れや狂いの出ることが少なくすこぶる素性のよい材であるといえる。そのほか工作上で は乾燥が容易であること、割裂性が大きいこと、材の表面の研磨や塗装の仕上げがうまくでき ることなどの特徴があげられよう。 顕微鏡で見た材の構成要素は道管、繊維仮道管、柔組織、放射組織の4つで、割合ノルマルな 配置をしている。道管は直径0.02〜0. 1 mmで比較的小さく、道管要素(一つの道管細胞)の上 下両端にあるせん孔板は甚しく傾斜し、単せん孔のもののなかに階段せん孔のものが混じると いう植物系統学的にプリミティブな様相をあらわしている。繊維仮道管は基礎組織として材の 60%程度を占めている繊維で、他の広葉樹材とくらべて比較的長く、また隔膜をもつものが多 い。柔組織は年輪の終わりに出る1〜2細胞層のターミナル柔組織が顕著で、このため肉眼で も年輪の境をはっきり認めることができる。放射組織は単列または2細胞幅の複列で、甚だ狭 い部類に入り、その構成はすべて平伏細胞からなる同性か、または辺縁に直立細胞をもつ異性 である。                                   (平井信二) K 5 E W 5 7935 かなえ書房@ 木の事典 ホオノキ 」             Magnォ o占oむa Thunberg i ホオノキの利用一般 ホオノキは樹形がよく、葉・花の大きく豪壮,なことから造園樹として公園や庭に植えられ、ま れには街路樹になっていることもある。本材原木としては径があまり大きくないが、材が軽軟 で欠点が少なく素性がよいことから器具材、建築材(内部装飾材匸機械材、家具材、建具材、 箱材、運動具材、彫刻材などと何にでも広く用いられる。 しかし産出量が多くなく他の樹種に 見られない特質があるので、むしろ指物(さしもの)、寄木細工、漆器の素地、製図板、定規、 下駄歯、刃物鞘といった特殊な用途がホオノキ材の本領といえよう。 ホオノキの木炭は均質なので金、銀、銅、漆器などを磨くのに用いられ、とくに印刷用銅版研 磨にアブラギリ炭とともに必要なものとされている。これは白炭に近い作り方で製炭されたも のを使う。 また昔は眉墨に使われた。 樹皮を乾燥したものを生薬と匸和厚朴(わこうぼく)といっている。もともとわが国でホオノキ に厚朴および浮爛羅勒をあてるのは正確でなく、厚朴の本体は中国産のMagnolia officin鬲 RhH[)En et Wilson (マダノリア・オフィキナーリス)である。 厚朴および和厚朴はともに magnolとmachilolという成分を含み、利尿、去痰、腹痛、胸のつかえに用い、また駆虫の効 かおるともいう。ホオノキの果実を干したものが和厚朴実で、芳香かおり、これも樹皮と同じ ように使われるようである。                             (平井信二) K 6 E W 6 7935 かなえ書房@ 木の事典 ホオノキ 、             Magn o加むα Thunberg 材の特殊な用途 板物ホオノキ材の最高の名声を保っていたのは製図板であろう。 もちろんこれは素材のままで 使う時代のことであって、昨今のように合板を使うごとになってきては、一般にはシナノキ合 板、上等品はヒノキ・スライスばり合板にばとんどその席をゆずってしまったものと思われる。 裁(たち)板はカツラが多く用いられるが、これはカツラ材に大材があるからであって、上等 品はホオノキであった。俎板は上等品はヒノキ、一一一糸と品はスギの他にあまり峺くない広葉樹材 なら何でも用いられるが、ホオノキはそのうちでも上等の方に属する。刃先を痛めないからだ という。刃物鞘にとくにホオノキを賞用するのも、材に欠点がなく狂いが少ない上に刃物を痛 めぬということによるものである。朴歯の下駄といえば明治のよき時代の書生さんを思い出寸。 朴歯はおもに高下駄と駒下駄の中問の晴雨兼用・日和下駄に使われたもので、かつてはホオノ キ材の最大の用途でもあった。会津若松、越後村上など漆器の産地ではホオノキは素地材の最 も良いものの1つであった。 このようなホオノキ材の特質を生かした古くからの用途をさぐってみると、緇かいものにいろ いろと出てくるが、その多くは器具といった類のものである。現在これらはプラスチックなど に大きくとり変わられつつあって、とくにホオノキを求めるということは郷愁に似たようなも のであるかもしれない。 しかし日本産広葉樹材のうちでもきわめて優秀な材であるホオノキは 貴重な存在であり、それなりにその特色を生かす部面がまだあるのではなかろうか。建材に関 係するところでは、比較的小才法の装飾材、室内備品が考えられるが、落ちついているとはい えくすんだ材の色調がやや難点である。                   (平井信二) K 7 E W 7 7935 かなえ書房@ 木の事典 ホオノキ ・ K 8 E W 8 7935 ホオノキ 樹姿 ホオノキ 壮齢本の樹肌 ホオノキ 果実      かなえ書房@ 木の事典 ホオノキ ヲ K 9 E W 9 7935 ホオノキ 丸太 ホオノキ 花 ホオノキ 枝葉      かなえ書房@ 木の事典 ホオノキ K01EW107935 横断面(×印) 材の構造 放射断面(×フO)   接線断面(×70)    (菅野国男) かなえ書房@ 木の事典・ コブシ               Magnia kobus DE Candolle j  F コブシの名称 コブシの学名は朗α即んobus DE C八NDOLLE (マグノリア・コブス)で、ホオノキやモクレ ンと同属である。 コブシの名はつぼみの形によるとするのが通説で、古い歌に「時しあればこ ぶしの花もひらけたり君がにぎれる手のかかれかし」というのがある。 しかし秋成熟した果実 の形がもっと挙の感じに近いので、これによるのだという人もある。 古名でコブシハジカミと いうのはつぼみの形と味が辛いことによるとされ、またヤマアララギの名もあった。早春ヤマ ザクラよりも早く白い花を樹いっぱいにつけて山里の春を告げるので、各地にいろいろな方言 と民俗がある。 タチウザクラ(:収北)、タネマキザクラ、タウェザクラはこの花が開くと田を打 つとかもみをまくとかからきており、イトザクラはアサの種をまく二とがら、また鹿児島県で はこの花が咲くと、サツマイモを植えるという。コブシの花が多いと豊作だという伝承もある。 そのほかヤマモクレン、ヒキザクラ(おもに東北、北海道)の方言もかなり広く分布していて、 宮沢賢治の童話「なめこと山の熊」にヒキザクラのことが出てくる。 漢字には辛夷があてられ、俳句、和歌をけじめ詩、随想、小説の背景などにじよ七ば出てくる が、牧野富太郎博士は日本にしかないコブシに辛夷をあてるのは誤りで、本当のものは中国産 のモクレンガエnolia liliflora Desroux (マグノリア・リリフローラ)とされた。生薬でい う辛夷(シンイ)はもちろんこれであるが、コブシのつぼみも同様の用に供され、おもに鼻の 薬とされる。 コブシの英名にはThunberg's mエnolia力哺てられる。      (平井信二) K11EW117935 かなえ書房@ 木の事典 コブシ               Magnia kobus DE C ANDOLLE 丶 コブシの概要 コブシはモクレン科に属する落葉の中高本で、通常見られるのは高さ15m、直径30cmくらいま でであるが、稀にはもっと大きいものも見られる。樹幹は割合通直で、樹皮は灰白色から帯黄 灰色、ほぼ平滑である。葉は倒卵形、広倒卵形などで、長さ6〜13cm、幅3〜6Cm、縁に鋸歯 がなく少し波うっていて葉先は凸形になりその先端は鈍い。春3月下匍から4月に葉に先だっ て直径約10cmもある白いよい香りの花を樹いっぱいにつけて見事である。花弁は6個で基の方 はやや紅味を帯びる。 9、10月に紅色ででこぼこした長楕円形の集合果に成熟匸これが開裂 すると朱紅色の種子が顔を出しやがて白い糸でぶら下がる。 コブシの分布は北海道(日高)、本州、四国(愛媛)、九州、済州島の温帯から暖帯にわたってい るか、東北日本では日当りのよい適潤地にふつうに見られ、西日本では少ない。樹が小さく、 また量がまとまらないため、木材として生産される量はきわめて少ない。北海道の札幌付近な どにふつうにあるものは、葉もかも少し大きく、花が少し紅色を帯びるので、変種キタコブシ Magnoliaんobus DE Candolle var. 加reis Sargent (マグクリア・コブス・ボレアー リス)とされ、東北、北陸、北信にもこの形のものがある。 また、ニオイコブシ 封α即ォ salicifiM八XIMOWICZ (マグノリア・サリキフォーリア)はコブシに近縁の種類で、東北、 北陸に多く葉が細長い。 1名タムシバというが、葉をかむとうす甘いのでカムシバからなまっ た名称である。                               (平井信二) K21EW127935 かなえ書房@ 木の事典 コブシ 。              Magnia kobus DE C ANDOLLE f 材の組織、性質と利用 コブシの材は灰白色から帯黄灰色で辺材と心材の区別は見かけにくい。散孔材でホオノキの材 によく似ている。横断面で見ると道管の孔が一様に分布し、その直径は0.04〜0. 1 mmくらい、 道管要素の両端は単せん孔になっており、内壁にあまりはっきりしないらせん肥厚かおる。基 礎組織は真正木繊維または繊維仮道管である。年輪の終端に出るターミナル柔組織は放射方向 に3〜5細胞の層があって肉眼で年輪の境が明瞭に見かけられる。放射組織は接線方向に1〜 3細胞の幅で甚だ狭い部類に入る。 材質はホオノキによく似ている。気乾比重は0.郛付近で、通常ホオノキよりやや大きい二とが 多く、したがって少し硬く、また刃切れは少し悪い。 材はホオノキ同様に使えるが、樹の素性がそれはどよくなく、材色も綺麗でなく、少し峺いの で、工芸的にはホオノキにくらべてかなり劣るといえよう。小物の器具材、玩具、漆器素地、 薪炭材がおもな用途であるが、鉛筆材、割箸材に使われたこともある。皮付の丸太、小丸太は その雅致をいかして茶室の床柱、軒の垂木(たるき)などに使われる。木炭もまたホオノキの ものに似ていて、金、銀、銅などの研磨用にホオノキ炭に準じて用いられる。樹は春早く沢山 咲く花が美しいので花木としてよく植えられており、またまれに荳本に使われる二ともある。 なおm属の花木のモクレンやハクモクレンの接本の台木とされる。       トト井信二) K31EW137935 かなえ書房@ 木の事典 コブシ K41E W147935 コフシ 樹姿 コフシ 樹肌 午タコフシ 樹肌 かなえ書房@ 木の事典 コブシ K51E W157935 ニオイコブシの花 コフシ 花 ニオイコブシ 枝葉 コブシ 果実 かなえ書房@ 材の構造 、 木の事典 コブシ    ‘士ぼ呂糺厂口川勹」9 1 ”yfF  一1、渮寸汢体り−FjLF’〜’゛竰泗ニー薈 ! Lu日日j tIIIIli!ll!’  ゛。spi加I枦I駟I!IXj     レー。IIII。/力川スメフ’− IIIj         一卜゛4゛`{btnF        鳬叫 。      にほほいLL。。    I L ×ア0 放射断面(×70) 国男) かなえ書房@                 横断面(×50) (プレパラート提供:東京大学森林植物学教室) K61E W167935 木の事典 ハリギリ              瓦opanax pictus Nakai 1 ハリギリの概要 ハリギリは本材関係ではセンと呼ばれていることが多く、漢字には剌楸が当てられているが、 木材屋の問の俗字として栓が広く使われている。学わは瓦opanax pictus NΛKAI(カロパナ ツクス・ピクトウース)が用いられるのがふつうであるが、他の種名を使っている学者もある。 ウコギ抖に属する落葉高木で大木にな九人きいものは高さ25mくらい、直径1mくらいまで になる。太い枝を出寸雄壮な樹で、樹皮は黒褐色、不規則に深く縦裂して独特の外観を示生。 枝に鋭い剌(とげ)があるのでハリギリの名を生じ仁葉はすこぶる大きくて長さ、幅ともに 20〜30cmぐらいになり、掌状に1/3から半分くらいまで`5〜9裂してお・長い葉柄をもって いるので、天狗のはうちわといった様子である。 とにかくすべてに男性的な樹であるといって よい。5、6月頃に全体として球形になる故形花序を枝の賠きに出して小さな花をつけるが、淡 苺緑色で高い枝の先にあるので目につきにくい。秋には青黒い球形の果実になる。 北は樺太、圉千島から北海道、本州、四国、九州にまで広く分布レまたウスリー地方、満州、 中田、朝鮮にも見られる。肥沃な適潤地に生ずるので、北海道の開拓時代に開墾適地ご判定に 使われたという。材は各地で使われるが、まとまって出るのはやはり北海立である。                                       (平井信二つ K 71 E W177935 かなえ書房@ 木の事典 ハリギリ              尺OPa八ax pictus Nakai − アクダラ タラノキの若芽は早春の山菜としてうまいものの1つにあげられているが、これに縁の近い八 リギリの若芽も同じく食べる二とができる。ゆでて胡麻あえにするとか、汁の実にするとかで あるが、タラノキよりもあくが強くそればどうよくないということで、アクダラ、クマダラ、 イヌダラ、レンダラ、ボオダラなどいろいろな形容詞をタラにつけた方言が各地にある。方言 にはその他に枝に剌かおることからバラ、オオバラ、ナナカマバラ、チマキバラなどバラとい うのと、材がキリに似ているというのでハリギリ、ヤマギリ、タニギリ、イヌギリなどキリと いうのが全国各地に見られる。チマキバラというのは伊豆下賀茂地方の方言で、5月の節句に 粽(ちまき)を二の大きい葉で包むからである。横須賀では同じように餅を包むのに使うので カシワと呼ばれる。葉の形からの方言では伊豆⊃宅島にテンダノハウチワまたはテンダッパと いうのがある。以上のいろいろな方言はおおよそ貪肝唐慱十が採録されたものによった。また おもに関西方面の木仕屋の間ではツブ`という名が古くから使われていた。    (平井信二) K81 E W187935 かなえ書房@ 木の事典 ハリギリ 。             尺opanax pictus Nakai , 材の組織と性質 辺材は淡黄白色、心材は淡灰褐色で、その境はやや明瞭でない。 ときには心材の色がやや濃い ものもあるo環孔材であるため年輪が明瞭であり、太い幹の横断面を見ると、年輪の輪郭が蜘 蛛の巣状にやや角ばっているものがある。顕微鏡的な材の構成要素は道管、仮道管、真正木繊 維、柔組織と放射組織である。春材殼内側に径の人きい道管が並んでいるところを孔圈という が、ハリギリでは直径0.2〜0. 4 mmの大きい道管はふつう1列に韭んでいるだけである。 日本 産の主要樹種で孔圏の道管が1列なのはハリギリとケヤキで、この点で他の似たような環孔材 であるヤチダモやハルニレなどと区別することができる。孔圈から外の道管は径が急に小さく なり、横断面ではよく似ていて区別がつかない道管状仮道管といっしよになっていくつか集介 しており、その部分が板目面でやや暗色の縞目模様として肉H艮で見る二とができる。道管要素 は両端に単せん孔をもつ。柔組織は単独の柔細胞として孔圈道管および孔圏外道管群の周辺、 時に真正木繊維の組織中に散在している。放射組織は1〜6細胞幅で、単列のものは少ない。 おおよそ異性といわれるもので、上下両縁に直立細胞が現われ他は平伏細胞であるが、時には その中に方形細胞が混じるものがある。 材の気乾比重は0.52程度で、その重さ硬さは広巣樹材のうちでは中位といったところであり、 切削その他の加工にはちようど適当なものといえよう。材が白色材に近いので板目面では年輪 が明瞭な模様になって現われて装飾的価値が高いo時にはいろいろな杢(もく)が現われるも のかおる。材の耐朽性はあまり高くない。                   (平井信二) K91E W197935 かなえ書房@ 木の事典 ハリギリ 「             尺opanax pictus Nakai K オニセンとヌカセン 木材屋の間でセンにはオセニンとヌカセンの2種類かおるといわれる二とが多い。 オセニンの 材は硬く狂いが多く、ヌカセンは軟らかく加工し昜くて狂いが少ない故、ふつうの用途にはヌ カセン系統のものが良いとされている。一方、植物分類の方では葉の裏にほとんど毛がないも のを基本種のハリギリ、葉の裹に毛があるものをケハリギリKalopa凹丿pictus Nakai var. ゛昭頗戸白N AKAIカロパナックス・ピクトウース・マダニフイクス)、葉が存毛でしかも 切れ込みが深いものをキレハハリギリ 瓦叩anax pictus N AKAI var. magniソ汾us Nakai forma maximowiczi HARA (カロパナックス・ピクトウース・マダニフイクス・マキシモウ イッチイ)と細分匸オニセンはケハリギリであるとしている学者も多い。しかしオニセン、 ヌカセンの区別と葉の状態についての分頬と一致しているということはまだ確かではない。む しろそれぞれの樹の成長裃過により、成長のよいものは年輪幅が広くなって峺くオニセンとな り、成長の悪いものは年輪幅が狭くなって軟らかくヌカセンになり、その問に線が引けるよう な区別はないとしておく方が妥当と思われる。 なおキレハハリギリはふつう若本に見られる二 とが多いので、これは幼樹相であって、植物分俎上の区別とする匚当らないという考え方が多 い。                                         トト井信二) K02EW207935 かなえ書房@ 木の事典 ハリギリ 」             尺opanaxアタ加加s Nakai 材の利用、とくにセン合板 原木が適当に大きくて、欠点が比較的少なく、加工が容易で、木理鮮明なだめ、家具用材と して古くから利用されてきた。一見シオジ、ヤチダモによく似ているが、材色がさらに明るい ので装飾的価値はより高いと思われる。その他建築内装材、車両材、船舶材、器具材、機械材、 下駄材、楽器材、彫刻材、くりもの材、枕木など用途が多い。 しかし現在の用途としては何と いっても合板用が第一で、北海道産セン合板は海外市場にそ社名が高い。アメリカ市場では以 前ホワイト・アッシュ( white ash )の名でごまかしていたこともあったが、今では堂々とセ ン・プライウッド( sen plywood )でまかり通っている。 12〜13年ほど前までは道材合板の一 方の雄でありセン合板万能の時期もあったが、現在では量的にかなり少なくなっている。 また 原料としていわゆるオセニンは単板があばれるので合板に作りにくくて賺われたが、今ではそ うもいっておれず、何でも使っているものと思われる。とにかくセッ合板は内装壁面材、ドア ー、家具用として最も高級なものの1つであるといえよう。 なお九州の南部から琉球にかけて生じている変種にミヤコダラ、一一名リュウキュウハリギリ Xopanax pictus NakΛl var. /chuensis NEMOTO(力vコパナックス・ピクトウースヴレー チューェンシス)というのがあ帳基本種とは枝に剌がないか少ないこと、葉が5裂レモがな いことで区別される。材は通常のセンよりもやや峺く、孔圏外道管群の犒目模様の幅が狭く、 仕上げ面は光沢が多い。装飾材として特に賞用されるが、量的にはミ9わめて少ないと思われる。                                      (平井信二) iべ かなえ書房@ 木の事典 ハリギリ 、             瓦opanax P加沁s Nakai 下駄棒 北海道のセン利用の歴史の上で目立った1こまを占めるのが下駄棒である。センの材は比較的 軽くて材色が淡く、少しばかりキリに似た木理があるので、キリ下駄代用材としてまことに適 当であった。下駄棒というのは幅3寸5分、厚さレ才7分、長さ6〜9尺の無欠点の板に割っ たり挽いたりしたもので、数足分の下駄がこれから採れる。上記にあら木取りしたもの、または 原本を奥地から河川を利用する管流しなどで出材し、これを小樽の木材商がまとめてさかんに 本州方面へ移出しか。そのため小樽には本材商の長者が続出しかわけである。 二の下駄棒製材 の仕様は後には多少違ったものもできたが、これらはいずれも何足分かに裁断し、鉋をかけ溝 を掘って、鼻緒(はなお)を通寸孔をあければすぐ下駄に作れるように製材したものである。 その送り先は大阪、神戸を中心に名古屋から関西、四国、九州方面であったが、後には岡山県 尾道が中心となり、栓下駄といえば尾道というほど隆盛となった。下駄棒の生産は明治末年か ら始まって大正10年頃を頂点とし、安い下駄として小、中学生などの用に広く使われた。 しか しゴム靴の普及によって次第にとってかわられ、またセン材自身も家具、器具用としてよ・襾 格の高い用途が開けてきたため、華々しい1時期を印して、現在ではこのような利用の仕方は ほとんど消滅したといってよい。                        (平井信二) K22E W227935 かなえ書房@ 木の事典 ハリギリ ・ K32E W237935 八UギU 樹遐 八UギU 樹咨 八UギU 樹肌 かなえ書房@ 木の事典 ハリギリ K42E W247935 ヲ /・ギU 樹幹沁h 八UギIり 枝葉 かなえ書房@ 木の事典 ハリギリ K・52EW257935 ケハリギU 樹姿 ギレハハリギU 若木 ミヤコダラ 樹遐 かなえ書房@ 木の事典 ハリギリ K62E W267935 横断面(×50) 材の構造 放射断面(×アO)   接線断面(×・)    卜昔野国男) かなえ書房@ 木の事典 トチノキ               Aescぴs turbina Blume トチノキの概要 トチノキの漢字には栃、橡、挧、七葉樹などがあてられており、学名はAesc皿旨回心α B LUME (エスクルス・トデルビナータ)である。英名を使う場合には  Japanese horse- chestnut があてられる。 トチノキ科ではわが国にこの1種しかない。大木になる落葉樹で、 高さは30mにもなり直径の大きいものが天然林に残っていて、ときには2m以上のものが見ら れる。幹の形は若い木では比較的真っすぐであるが、大径木になると太い枝をともなってその 形は悪くなる。樹皮は壮令木では暗灰褐色で縦の割れ目が人っているが、老令木になると片状 にはげてヶヤキの大木に見られるような雲紋状の外観を示し、やや赤味のある褐色を呈する。葉 は対生する特異な大形の掌状複葉で、小葉は7個内外、細長い倒卵形で、先端は急に尖り基部 は細い楔形になっている。中央のものが最も大きく長さ30cm、幅12cmにも達する。 5月頃長さ 20〜30cmもあって数十花をつける大きな円錐花序を小枝の先端に直立してすこぶる目立つ。花の 色はほぼ白いが、細かく見ると花弁の基の方に黄色からうすい紅色の斑点が認められる。 10月 頃大きな果実がなり、熟すると3裂して球形栗色の種子、俗にいう栃の実を落とす。 二の樹の分布の北限は北海道の銭函イ寸近で、それより南へ本州、四国、九州とあるが、とくに 東北地方によく見られ、九州では稀であるという。低山地帯の谷筋の肥沃な処に多く生えてい る。木材としての産出地も東北地方、北海道南部、関東北部から多少見られるが、まとまって 出るところは少ない。なお栃木県の県の木に指定されている。         (平井信二) K72E W277935 かなえ書房@ 木の事典 トチノキ                Aescus 嵒祐a Blume とちの実 種子すなわち「とちの実」は径3〜4cmもある大形で、澱粉がいっぱいあるので、古くはクリ ヤクルミ、カシ、ナラ、シイの実などとともに縄文時代の主要食糧の1つであった。それ以来 も山村で食糧の補いに多く使われてきた。ただ、タンニンや苦味質、有毒なサポニンなどを含 んでいるので、これらを取り除くためにかなり面倒な操作が必要である。ふつう乾かして保存 していたものを水につけて皮をはぎ、灰汁で煮たあと粉にひき、さらに水で洗滌、沈澱をくり かえしてとち澱粉が得られる。これを米の粉、小麦粉、そば粉とまぜてとち餅やとち団子、と ち煎餅、とち麺などにしたり、飴にしたりする。山村、とくに山奥の深い処では貴重な食糧の 1つであったが、この頃では特別に作って山の温泉の土産物にしているところが2、3あるく らいではな力ヽろうか。昭和10年頃に林業試験場で永井芳雄氏が多少系統的にその製造法を研究 し、各種の食品菓子に応用した例を報告している。 なおトチノキの葉が大きいので、ホオノキと同じように飯を盛る菓に用いる民俗かおり、とく に秩父地方ではトチノキの葉で包んだ粽(ちまき)を柴苞(しばづと)と呼んでいることを倉 田悟博士が報告している。                          (平井信二) K82E W287935 かなえ書房@ 木の事典 トチノキ 。               ソ\escuius 嵒祐a Blume 材の組織と性質 トチノキは辺材と心材の区別が一般に不明瞭で、材は赤味を帯びた黄白色から淡黄褐色を呈す るが、多少暗色の心材相当部分を示すものがある。散孔材で比較的均質、緻密であるが、気乾 比重0.52程度で、広葉樹材のうちでは軽輊な方に入り、切削その他の加工はきわめて容易で ある。木理はときに不規則になっている。肌目は細かく-般に材面は絹系光沢を示す。材の乾燥は 容易であるが、狂いが出やすく、また条件が悪いときわめて腐れの早い材である。 材の顕微鏡的な構成要素は道管、真正本繊維、柔組織、放射組織であって、特徴的なことをあ げると、道管が一様に分有していること、道管の内壁に著しいらせん肥厚かおること、年輪の 終わりに1〜3細胞層のターミナル柔組織かおること、軸方向に5〜15細胞連なる同性の放射 組織は1細胞幅(単列)で板目面にこれらがきれいに列を揃えて並ぶことなどである。 ことに 最後のことは肉眼でも明らかな板目面のリップルマーク(波状紋)として認められ、トチノキ 材の著しい特徴になっている。 日本産の主要材でこのように明瞭なリップルマークがあるのは 他にはカキノキくらいである。 東北地方ではとくにトチノキの大径木を見ることが多いが、これらは木理が不規則になってい ることがかなり多く、このようなものでは材面に縮み杢(もく)、波杢などが現われる。 また老 木では根元付近などが瘤状になっていることがあってこのものから複雑な杢の材が得られる。 とくに縮み杢が出るものも多く、卜寸につきm佃の割合で縮みがあるものを卜千ジミという。 なお材の腐朽が多少進行したもので、初期腐朽部分と未腐朽部分との境に黒い帯線が入ってい るものは1種の模様になるので、これも賞用されることがある。        (平井信二) K92E W297935 かなえ書房@ 木の事典 トチノキ 「               Aescび加8 沁ァ酊na blume 材の利用 トチノキの材は一般にはあまり良質のものとは見られていない。それは比重が小さいのにかか わらず狂いが出やすくまた腐りやすいことによるのであろう。一般的な用途としては器具材に 用いられることが最も多く、その他家具材、建築材(各種造作材)、紡績用木管、漆器の素地、キ ャビネット、玩具、寄木細工および木象嵌(もくぞうがん)、彫刻材、雑箱材などである。かつ ては下駄材、経木(きようぎ)、マッチ軸木などに用いられたこともあった。私共が囗常目にふ れるものでは飯しゃもじ、杓子などがあろう。それにはアオト千といわれる白色材が賞用され、 心材相等部分の色の濃いいわゆるアカト千は敬遠される。 特殊な用途としては杢板を建築内装の腰羽目、ドアー材などにすること、染色して和室の床柱  (とこけしら匸床框(と二がまち)、落掛(おとしがけ)などの装飾材にすること、とくにクロ ガキの模擬材にすること、杢板をバイオリンに使うことなどがあげられる。バイオリンの裹板 に使う杢板はカェデが上等で、トチノキになると安物になる。 パルプ、木炭としても良い方ではない。たた七活性炭にはシラカンバ、ハンノキと共に好適で あるとされている。なお樹皮にはカテコール系のタンニンが4.5〜8. 5%含まれているので桂 皮用に使うことができる。                          (平井信二) K03E W307935 かなえ書房@ 丶y丶 4 X 木の事典 トチノキ 」    天然記念物・ポッカトチノキ            (新潟県・姫川温泉) K13EW317935 トチノキ 壮齢木の樹肌 トチノキ 高齢木の樹肌       かなえ書房@ 木の事典 トチノキ 、 K23EW327935 トテノキ 果実 卜ず熹歉ン` I コ; !・●・●・ トチノキ 花 かなえ書房@ 木の事典 トチノI序 K33E W337935 横断面(×50) 材の構造 放射断面(×フO) 接線断面(×アO)  卜庁野国男) かなえ書房@ 木の事典 トチノキ属の樹木                   討四c皿 ssp. マロニエの並木 ノ川一といえばマロニエの並木というほど有名なマロニエ( marronier )は、トチノキにきわ めて近い種類であって、学名はソ\escびS/ぱppocastanum Linnaeus (エスクルス・ヒッポ力 スターヌム)、和名はセイヨウトチノキという。英名は horse − chestnut, buckeye,独名は Rosskastaeで、パリーばかりでなくヨーロッパ諸田で広く街路樹や庭園樹として使われてい る。パリーでは5月になるとトチノキによく似た白い花穂を樹冠いっぱいにつけ、ちようどろ うそくを立てたように見えてなかなか壮観である。なお淡紅色から紅色の花をつける別の種類 ペニバナトチノキAescus carnea H八YNE(エスクルス・カルネア)も諸処に植えられてい る。 これはセイヨウトチノキと北米産の暗紅色の花をつけるアカバナアメリカト千ノキソ1りc心  夘にz凵NN八EUS (エスクルス・パビア)との交配で作り出された園芸品であって、ふつう マロニエに接木をして育てる。東京都内の街路樹にもマロニエがあるといわれることがあるが、 これは日本産のトチノキで、本当のマロニエはばとんどない。霞が関から桜田門へかけての街 路樹も日本産のトチノキである。 トチノキ属ノ1回(公(エスクルス)には以上のもののはかに中国、インド、北アメリカなど に20種はどの樹木があり、いずれも材質は日本のトチノキによく似ている。  (平井信二) K43EW347935 かなえ書房@ 卜. 木の事典 トチノキ属の樹木 マロニエ 樹姿(/・、セーヌ河畔) K53E W357935 マロニエ 枝葉と果実 かなえ書房@ 木の事典 トチノキ属の樹木 K63E W367935 フフカバナフフメリカトチノギ 花 ベニバナトチノキ 花 かなえ書房@ 木の事典 シナノキ 「              石/泌  ゾ叩o肩口  SlMONKAI J シナノキの概要 シナノキの学名はTilia j叩o肩皿SIMONKハハテイリア・ヤポニカ)で、漢字に級木、科本、 槓樹があてられることがあるが、これらはあまり使われることがなく、むしろ樞を書いている のがよく見られる。 しかしこれは全くの当て字で、ふつうの漢和辞典にはシナノキの意味では 出てこない。 シナという名は「結ぶ、くばる、くくる」という意味のアイヌ語からきていると されているが、それは、樹皮から繩、布を作ることによると思われる。英名をつける場合は、 Japanese 1 indenが用いられる。 シナノキ科に属する落葉樹で、大きいものは高さ20〜25m、 直径1mくらいにもなるが、ときには2mくらいになる大木もある。幹の形はふつうあまりよ くなく、太い枝をかなり低いところから分岐することが多い。樹皮は灰褐色で浅い縦長の溝に 割れている。葉は互生し左右少しいびつな広卵形で先が尖り縁には鋸歯があり、長さ・幅とも に4〜8cmである。 5〜7個の掌状の葉脈をもっていて下面はややうす白く長い葉柄がある。 6、7月頃開花するが、花そのものは小さく淡黄緑色であまり目立だない。 しかし花の出方が 変わっていて花序の柄にへら形の苞がついているので、ちようど細い葉の真中から柄を出して 花をつけたという感じである。小さい卵球形の果実をつける。北海道、本州、四国、九州、対 馬、中国に分布し、日本の温帯林を代表する樹種の1つで、どこにでも見られるが、とくに北 海道にかなりの蓄積かおり、本材としてまとまって出るのも現在は北海道である。シナノキは 蜜源植物の1つであって、養蜂業者は夏になるとシナノキの花を求めて北海道へ渡っていく。                                       (平井信二) K73EW377935 かなえ書房@ 木の事典 シナノキ               石/飽  ノ叩onica  S IMONKAI マダの皮 シナノキ樹皮の靭皮繊維はきわめて強いので古来全国各地でこの繊維から布や繩、畳糸などを 作ることが行われ、そのために若木を育成したこともあるようである。大蔵永常の「老農茶話」 に、徳苧(とくお)の木と名づけてその有肝陛と繊維の採り方に詳しい記載がある。東北地方 ではシナノキをマダとかモウダとか呼んで、山村の人々には生活に密接な関係かおる樹であっ た。柳田国男氏の「山の人生」にマダの皮の面白い話が採録されている。陸中閉伊(へい)郡 の六角牛(ろっこうし)山で、青笹村の某が山に人ってマダの樹の皮をはいでいると、7尺余 りの山男が出てきて、すけてやるべと、またたく間に沢山はいでくれた。それから某が持って きた餅を食べたが、来年はいついつの晩に3チトの餅をお前の家の庭に出しておいてくれ、1年一 分のマダの皮を持っていってやるからというので、その通りにしたら約束の日の夜中に馬2駄 はどのマダの皮をおいていった。その後毎年同じ日にこのことが行われたというのである。 ま たシナノキは北海道のアイヌの織物のおもな原料の1つでもあった。西日本でもヘラと袮して 同様に繊維を利用した。もっとも植物学でいうヘラノキT山aんiusiana MAKINO et Shirasawa  (テイリア・キウシアーナ)はシナノキによく似た同属の別の種類である。このものは関西以 西、四国、九州に分布しているが、シナノキのようにふつうにあるものでなくむしろ珍しい樹 に属する。これも同様に樹皮を利用する。シナノキの繊維のとり方はなるべく10年くらいまで の若木を5、6月頃に伐採して樹皮をはぎ、そのまま流水に1ヵ月たらずつけておくか、灰汁 で煮沸して上質の内皮の部分を分離する。これを叩解すると麻に似た繊維が得られるわけであ る。                                     (平井信二) K83E W387935 かなえ書房@ 木の事典 シナノキ 。             T ilia  j aponica  SIMONKAI 材の組織と性質 シナノキには辺材と心材の区別があるが、その境界はやや不明瞭で、辺材は淡黄白色、心材は 淡黄褐色を示す。年輪はやや不明瞭、一般に均質で肌目も精緻である。気乾比重が0.50程度の 軽軟な広葉樹散孔材の代表的なものであって、含水率変化に伴う収縮率の値も小さく、乾燥 は容易、切削その他の加工がきわめて容易である。ただ接着性が一般に良好でなく、耐朽性も 低い方に属する。 顕微鏡的な材の構成要素は道管、仮道管、真正木繊維、柔組織と放射組織で、そのうち仮道管 は道管の周囲に僅か存在することがある程度で顕著でない。道管の内壁に明らかならせん肥厚 があること、放射方向には1層の柔細胞が接線方向に数個連なった接線状柔組縅が繊維組織の 中に一様に分布していることなどがやや特徴的であろう。柔組織にはこのばかにターミナル柔 組織と単独に散在している柔細胞とがある。なお道管は径0.06〜0.13mmで小さく、両端に単せ ん孔をもつ。真正本繊継は長さ1. 5 mm程度で広葉樹材のうちでは割合長い方である。放射組織 は1細胞幅の単列のものと2〜5細胞幅の多列のものとがあってあまり顕著でなく、すべて平 伏細胞力ヽらなる同性である。材の板目面をよく見ると肉眼でリップルマーク(波状紋)を認め ることができる。これは基礎組織の真正木繊維の端が割合そろって並んでいることによるもの で、トチノキのように放射組織の並列に由来するものでないから、トチノキのようにはっきり はしない。                                   (平井信二) K93E W397935 かなえ書房@ 木の事典 シナノキ 「              THi a  j aponica  SIMONKAI 材の利用、とくにシナ合板 原木が適当な大きさのものが得られ、材に欠点が割合に少なく、軽軟、均質なので、器具材、 家具材、建築材、ペニア材、楽器材、彫刻材、箱材、鉛筆材(上等でない)、マ ッチ軸木、下駄 材など広い用途をもつ。ただし最後の3つはこのごろは少なくなって歴史的なものといってよ い。 またパーティクルボード、ファイバーボード、パルプ用としては広葉樹材中では使い易い 材である。特殊なものに模擬材、ことに床柱用のエンジュ(正確にはイヌエンジュ)のイミテ ーションとしては随一の材料であり、また塗装の仕上がりが良いことからラジオ、テレビ、ス テレオのキャビネットに賞用される。その他小物でとくに私達がE]常目につくものでは割箸、 アイスキャンデーの棒やアイスクリームのへら、経木(さよう帽、詰物用の木毛、アイヌの熊 彫などいろいろ面白いものがある。 現在のシナノキ材の利用としては何よりも第一に合板をあげなければならない。道材合板が国 内と海外でその名声を證っていた時に、セン合板、カバ合板とシナ合板はそれぞれ多少時期が 違っていたがチャンピオンであった。現在量的に少なくなってきたとはいえ、最近ではとくに ランバーコア一合板としての用途があり、シナノキとしては依然として最も重要な用途である。 シナ合板で1つ問題があるのはユリア樹脂接着剤を使うと接着力が低いことである。その理由 はシナノキ材が多孔質で接着剤液を吸収して接着面に残るものが少なくなること、接着を害す る糖類か特殊成分が含まれていることなど、いろいろと論じられているが、いまのところまだ 決定的な解明がされていない。                        (平井信二) K04E W407935 かなえ書房@ 木の事典 シナノキ 」 K14E W417935 シナノキ 樹姿 シナノキ 若本の樹肌 シナノキ 高齢本の樹肌        かなえ書房@ 木の事典 シナノキ 、 K24E W427935 シナノキ 花 シナノキ 未熟果実 かなえ書房@ 木の事典 シナノキ ・ K34E W437935 シナノキ 枝葉 ヘラノキ 枝葉 かなえ書房@ 木の事典 シナノキ K44E W447935 横断面(×50) 材の構造 放射断面(×アO) 接線断面(×  j’‘   /万卜μじ昨ノ  /*・ノ ⊃亅濠茫甘笊V70    (菅野国男) かなえ書房@ 木の事典 オオバボダイジュ             Tilia maximowicziana S HIRASAWA 丶  アカシナとアオシナ  北海道でシナ材として出材されるものの中には本来のシナノキの他に、同属の別種であるォォ  バボダイジュ乃lia maximowicziana S HIRASAWA (テイリア・マキシモウイッチアーナ)が  混じっている。本材を扱うものはシナノキをアカシナ、オオバボダイジュをアォシナといって区  別していることも多い。オオバボダイジュは北海道から本州中部まで分布するものであるが、  シナノキにくらべて葉が大きく長さ10〜15ゥ、幅8〜12cmになり、毛も多いのではっきり区別 一ができる。東北の山村などではシナノキと同一としているところが多く、たまたま区別してい ごる方言ではォォマダ、ォォバマダなどというのがある。材の組織や性質はシナノキによく似て  おり、かつて松島鉄也博士が両者の材の強度の比較試験を実施した結果によるとほとんど差別  をつけることができない。樹はシナノキほど大径にならないが、合板原木として手頃なものが  出材され、また辺材の部分が多いので、合板用材としてはむしろこの方が好まれている。  なおシナノキとオオバボダイジュの生育地がばぼ同様なので、時々両者の間の雑種が見られる。  これはノジリボダイジュ石/加バca HlSAUTI (テイリア・ノジリコーラ)と呼ばれ、茎  葉などのいろいろな形質は両者の中間をあらわしている。           (平井信二) K54E W457935 かなえ書房@ 木の事典 オオバボダイジュ K64E W467935 オオバボダイジュ 樹咨 オオバボダイジュ樹幹 オオバボダイジュ 樹肌       かなえ書房@ 木の事典 オオバボダイジュ 。 K74EW477935 オオバボダイジュ 枝葉 ノジリボダイジュ 樹晏 ノジリボダイジュ 樹肌 かなえ書房@ 木の事典 オオバボダイジュ 横断面(×50) (プレパラート提供ン東京大学森林植物学教室) K 84 E W487935 材の構造 放射断面(×アO)   接線断面(×ア○    (菅野国男) かなえ書房@ 木の事典 シナノキ属の樹木  4 ボダイジュとリンデン シナノキ属の樹木は北半球の温帯に約30種ほどあって、それぞれ各地で有用な樹本に数えられ ている。 二の類は英名で・ 1 indenまたは1 imeと呼ば杠、アメリカではbasswood という二とが 多く、独名はLindeである。 ヨーロッパ産のおもな種類はナツボダイジュ石ぶ卯加山s SCO匹LI(テイリア・プラテイフイロース)とフユボダイジュTilia corda Miller (テイ リア・コルダータ)であるが、それらの間の雑種も多く、セイヨウシナノキ石lia europaea 凵xx八Eコs(テイリア・エウロペーア)と袮して、ヨーロッパの都市で街路樹や庭園樹にさか んに用いられている。アメリカ産のおもな種類はアメリカシナノキTilia amリicana LINNAEUS  (テイリア・アメリカーナ)で、朝鮮、中田東北部やシベリア東部には有用な数種類かおる。 シューベルトの歌曲「泉に沿いて、茂る菩提樹……」は上記のリンデンであって、二れをボダ イジュと訳するのはいささ力ヽ問題である。釈迦がその樹の下で悟りをひらいたという本来の菩 提樹はクワ抖のインドボダイジュFicus reパgiosa LlNf、r八Js(フイクス・レリギオーサ)で あって、シナノキ類とは植物学的には何のゆ力・もない。 もっとも中国原産でわが国のお寺な どに植栽されているものにボダイジュ石/戒叩eliana MAXIMOWIOZ (テイリア・ミケリア ーチ)というのがあ・これまで挙げたシナノキ好に何々ボダイジュと和名をつけたものが多 いが、たまたま葉の形がインドボダイジュに少し似かよっているというのに過ぎないのである。                                       (平井信二) K 94E W497935 かなえ書房@ 木の事典 シナノキ属の樹木 ・;・.‘ヤ ナツボダイジュ 樹姿 K05E W507935 ナツポワイジユ 樹肌 ナツポダイジユ 竝本(パU郊外・        フォンテンブロー)         かなえ書房@ 木の事典 シナノキ属の樹木 。 K15EW517935 フフメリカシナノキ 樹姿 ポダイジコ 樹藐 ボダイジュ 枝葉と果実        かなえ書房@ 木の事典 イヌエンジュ  Maackia amurensis Ruprecht et MAXIMOWICZ var. buergeバ C.K.S CHNEIDER イヌエンジュの概要 イヌエンジュは朝鮮、中国東北方面にあるカライヌェンジュMaackia amurensis R UPRECHT etM八XIMOWICZ (マーキア・アムーレンシス)の変種とされ、したがって学名にはMaackia amlxn?nsis R UPRECHT et M AXIMOWICZ var. buerge元C. K. S CHNEIDER (マーキア・アム −レンシス・ビュルゲ・が`あてられている。植物学の方でエンジュといっているものは中圃、 朝鮮原産でわが国では庭園、とくに寺院などに植栽されている槐S叩加mj叩oゥLI八八EUS  (ソフオラ・ヤポニカ)であるが、わが国の山野に自生するイヌエンジュも全国各地でひろく エンジュと俗称されている。 イヌエンジュはマメ科に属する落葉樹で高さ15m、直径60cmくらいまでになるが、一般に小高木 ないし中高木といった程度である。樹皮はやや褐色をおびた暗灰色で、若木では比較的平滑で あるが、老木になると浅い縱の裂け目が現われる。葉は3〜7対の小葉をもつ奇数羽状複葉で、 ちょっとニセアカシア(ハリエンジュともいう、俗にいうアカシア)尺'linia pseacacia 凵心八EUS (ロビニア・シュウドアカキア)に似ているが、葉の下面に灰白色の軟かい毛を密生 している。ことに新葉の萌え出る春先には銀白色で美しくよく目立つ。 7、8月頃に新しい枝の 先に総状の花序を1個または数個出し、小さい白色から黄白色のマメの花を沢山着ける。秋に は扁平でやや湾曲匸片側に狭い翼がついた長さ5〜9cmの莢(さや)の実になる。 千島、北海道、本州、四国、九州、朝鮮に分布レ低山地帯に多いが、蓄積としては少なく、 木材として出るのはおもに北海道である。本州中部以南にあるものは葉と花が少し小さく、萸 の翼の幅が広いのでハネミイヌェンジュガaEん夕o元屁a T AKEDA (マーキア・フロリブ ンダ)という別種であるとされていることが多いが、実際上見わけることはかなり難しい。                                       (平井信二) K25EW527935 かなえ書房@ 木の事典 イヌエンジュ  Maackia amurensis Ruprecht et MAχIMOWICZ var. buergeパC.K.S CHNEIDER 「 l     y 丶   S 材の組織と性質 イヌエンジュの辺材と心材の区別は明瞭で、辺材は狭く黄白色、心材は暗褐色であって、処々 に淡色の部分が現われて縞目を作るものがある。顕微鏡的な材の構成要素は道管、道管状仮道 管、真正本繊維、柔組織と放射組織である。環孔材であるが、やや散孔材的な様相を示す。年 輪の内側の孔圏には1〜4層の大きな道管が並んでおりそれらの直径は0.05〜0. 3 mmの範囲に わたる。これから孔圏外に移って道管の径は徐々に小さくなっていくが、孔圏にすぐ隣接する 部分では数個の道管が団塊状に集まり、また年輪の終末近くでは放射方向に4〜扣細胞層で接 線方向または斜め方向に多数連なった小道管の集合帯となる。道管要素の両端に単せん孔をも ち、孔圏外の小道管の内壁にはらせん肥厚がある。仮道管は孔圈道管の周辺に、また孔圏外道 管群に混在して現われるもので少数で目立だない。内壁にらせん肥厚かおる。真正本繊維は材 の基礎組織を形成している。柔組織には孔圈で道管の周辺にある周囲柔組織と、孔圏外道管群 と真正木繊維の間に混じって散在し、ときには接線状に連なって配列しているものとがある。放 射組織は1〜7細胞帽で単列O細胞幅)のものは少ない。上下両縁が直立細胞力ヽらなり、他 は平伏細胞力ヽらなる異性である。 材の気乾比重は0.59程度でやや重硬であり、心材の耐朽性が高い。強度も比較的大きく、靱性 も高い。切削などの加工はやや困難であるが、材面を磨くとよい光沢が出る。 (平井信二) K35E W537935 かなえ書房@ 木の事典 イヌエンジュ 。 Maacんia amurensis Ruprecht et MAχIMOWICZ var. buergeパC.K.S CHNEIDER − 材の利用 材は木材屋の間ではエンジュと称レ濃い暗褐色で雅致があるため、昔から床柱、床框(とこ がまち)、落掛(おとしがけ)などによく用いられてきた。一般にエンジュのはかにエンジある いはクロエンジュといっている処が多い。材面に自然の凹凸あるものはそれをいか匸まだき わたった白色の辺材部分が濃褐色の地の中にいくらか混入するものを面白く取り入れることも行 われている。 しかし本物のエンジュの材、すなわちイヌエンジュの床柱などは簡単に手に入ら なくなってきているので、最近はシナノキ材を加工したイミテーションが多く出まわっており、 さらにこれも集成加工したものが生産されるようになっている。また指物(さしもの)、すなわ ち和家具、鏡台、針箱などに使われるが、和風のみでなく、洋家具にもよく似合い、洋風の腰 羽目のような内装材、フローリングなどにも好適である。曲木にしてよく、強度・靱性がある のでとくに手斧(ちような)の柄に賞用され、また一般の農具・工具の柄、機械・車両の部品 にも使われ、かつては馬鞍、北海道の鉄道枕木にどんどん用いられたことがある。そのほか小 さいものでは挽物(ひきもの)の煙草盆・盆・菓子器などがあり、また三味線・月琴の胴、太 鼓の胴のような楽器、寄木細工、木象嵌(もくぞうがん八彫刻、将棋の駒、漆器の素地などと その用途は広い。薪炭材としても一般に使われた。 植物学上の本当のエンジュの材もイヌエンジュとよく似ていて、材だけでは区別することがき わめてむずかしい。 したがってイヌエンジュ(にせのエンジュ)と全く同様に使えるが、実際 に材が出てくることはほとんど無いと思われる。               (平井信二) K45E W547935 かなえ書房@ 木の事典 イヌエンジュ 「 K55EW557935 イヌエンジュ 樹姿 イヌエンジュ 樹肌 イヌエンジュ 花      かなえ書房@ 木の事典 イヌエンジュ 」 K65E W567935 横断面(×叩) 材の構造 放射断面(×フ   接線断面(×耶    (菅野国男) かなえ書房@ 木の事典 キハダ   Pyl/endron amure?nse Ruprecht var. sackinense F R. S CHMIDT 1 キハダの名称 現在、本材の方でいうキハダの学名には、一般にPhell四加on amurense R UPRECHT var. sachaIinense Fr. Schmidt (フェロテ`シトロン・アムーレンセ・サカリネンセ)が使われ ている。すなわちウスリー、アムール地方から満州、北支那、朝鮮、千島、樺太にかけて分布 するアムールキハダPhellode7・on amurense RUPRECHT(フェロデ`ンドロン・アムーレンセ) の葉の幅が広い変種とされ、したがってヒロハノキハダまたはカラフトキハダと特別に呼ばれ ることもあって、その分布は南千島、南樺太、北海道、本州、四国、九州、朝鮮とされている。 しかしこの葉形の区別は明確でないので基本種と同一として変種名を使わなくてもよいのでは ないかと思う。なお基本種およびヒロハノキハダは葉も花序もほとんど毛がないものであるが、 花序に毛かおり葉の裏に毛が多く、とくに縁に毛かおる変種はオオバノキハダト一名ミヤマキ ハダ、フジキハダ、ニツコウキハダ)八昂面ron αmr・ゥse R UPRECHT var. /ゥZ S PRAGUE (フェロデ`シトロン・アムーレンセ・ラバルレイ)で、あまり多く見られないが、 北海道、本州、四国、九州に分布するキハダというのは以上すべてまとめた名称と考えてもよ い。キハダの漢字には黄蘗、黄柏、蘗木などかおり、俗字では黄肌、黄木と書かれる。この属 の樹木は樹皮にコルク層がよく発達するので英名をcork tree といい、とくにキハダを含めて アムールキハダをさすときはAmur cork treeが使われる。なおキハダは北海道、とくに本材 業者の間ではふつうジゴロといっている。これはアイヌ名のシケレベニからきたものである。 各地の方言ではキハダのほかにキワダと発音している処が多く、東北地方ではジゴロおよびそ れの訛ったスコロ、ヒコロなどがある。 また黄蘗の音よみのオオバクおよびそれから少し変化 した呼名が各地で使われている。                       (平井信二) K75EW577935 かなえ書房@ 木の事典 キハダ    Pyllodend穴)71 amurense Ruprecht var. sackinense Fr. Schmidt キハダの概要 ミカン科に属する落葉樹で、大きいものは高さ25m、直径1mにも達する。 自由に育つと太い 枝を広くはり出し傘形の樹冠を作る。樹皮は灰褐色で、深く密な網目状の溝がある外観を示し いかにもコルク層が発達しているという感じである。内皮は鮮やかな黄色でキハダの名はこれ から出ている。葉は対生し、3〜6対の小葉をもつ奇数羽状複葉で、長さは20〜40cmになる。頂 小葉は卵形から卵状楕円形、側小葉は長楕円形で左右ややいびつである。先端は鋭尖、基部は 鈍形から円形、縁にはふつう鋸歯がない。始めは少し縁毛があるが、後にはほとんどなくなる。 長さ6〜12cm、幅3〜5Cm、上面は濃緑色で、下面は黄緑色、時にはやや粉白で、基の方の葉 脈の上に白色の開出した毛を有する。なお油点はあるが不明瞭で、切ると1種の臭気がある。 6、7月頃小枝の先に広がった円錐形の花序を出し、小さな黄緑色の花をつけるが全く目立だ ない。雌雄異株で、雌株では10月頃青黒い径10mmくらいの球形の石果になる。これをシコノヘ イ、黄葉千(四国米の当字をすることがある)といい、駆虫薬に使うという。キハダは国内各 地の水湿の多い処を好んで広く分布しているが、材として多少まとまって出るのは北海道のジ ゴロである。 キハダ属凧ZO面ァ匹(フェロデ`ンドロン)は東アジアだけに数種類かおり、いずれもよく 似ている。 そのうちあるものはアメリカで街路樹、公園樹などに利用されている。                                       (平井信二) K85EW587935 かなえ書房@ 木の事典 キハダ 。   Phellodendァ匹amurense Ruprecht var. sackinense Fr. Schmidt だらにすけ この樹の黄色の内皮にはベルベリン( berberine )と少量のパルマチン( palmatine )という アルカロイドを含んでいて、すこぶる苦く、古来胃腸薬として最も有名である。吉野、高野山地方 の名産だらにすけ(陀羅尼助)がこれで、内皮を水で煮出したエキスをとり、煮つめて固形に したものだが、時にはつやをつけるために煮出すときにアオキの葉を加えることもある。だら にすけの名は一番長いお経である陀羅尼経を唱えるとき睡気をおさえるため、二れを囗に含む ことから出ているという。御百草、熊胆(くまのい)などの昔からの民間胃腸薬にもこれが多 く人っており、また漢方薬にも配合されている。先頃、黄蘗から作る塩酸ベルベリンを主成分 とした新ワカ末の広告ポスターにキハダの皮の図が画かれているのがあった。そのほか洗眼薬、 打傷・挫傷などの貼り薬にも使われる。長野県の戸隠や鬼無里にミョウセンといナ方言がある が、これもその著しい薬効を妙煎とあらわしたものであろうかと牧野富太郎博士はいっている。 キハダはまた飛鳥時代からの黄色染料で、延喜式にも三河ばか12か国の産地が出ている。これ は中国で服色として最上位の黄色を染めるのに黄蘗を用いたのにならったものである。布を黄 色に染めるほか、藍との交染で緑色に染めるのにも用いられた。北海道のアイヌの間でもキハ ダで黄色く染めた布は信仰上重要な意味をもっていて、キハダの樹もまた神事に用いられてい た。なお紙をキハダで黄色に染めた天平のキハダガミ(黄蘗紙)は虫よけの意味をもっているo 例えば石清水八幡宮や春日神社の宣命(せんみよう)用紙には必ずこの紙が用いられた。この ように有用な樹であったため旧幕時代には禁伐をした処もあったが、明治以後は近畿地方では かなり伐り尽したようである。                        (平井信二) K95EW597935 かなえ書房@ 木の事典 キハダ 「    、、   Phellendァ皿amurenst?ヽRuprecht var. sackinense Fr. S CHMIDT 材の組織、性質と利用 辺材と心材の区別は明瞭で、辺材は狭く淡い灰褐色、心材は緑色を帯びた黄褐色である。環孔 材であるため年輪は明瞭で、木理はおおむね通直である。顕微鏡的な材の構成要素は道管、道 管状仮道管、真正木繊維、柔組織、放射組織である。孔圈の道管は直径が0.1〜0. 3 mmで大き く、2〜5列ある。孔圈から外の道管は著しく小さくなり、始め道管状仮道管とともに数個集 合して団塊状であるが、年輪界近くになると接線方向に連なっていろいろな形の模様を示す。 小径の道管と道管状仮道管の内壁にらせん肥厚があり、時にチロースが発達する。道管要素の 両端には単せん孔をもつ。柔組織には道管のまわりの周囲柔組織と年輪界に近い夏材部に出て 接線方向に連なる数個細胞層の帯状柔組織かおる。材の基礎組織を形成するのは真正木繊維で、 時に隔膜木繊維になっていることがある。放射組織は接線方向は1〜5細胞幅であるがやや幅 の広いものが多く、平伏細胞だけからなる同性である。 材の気乾比重は0.49程度亡、広葉樹材のうちではやや軽軟の方であり、切削などの加工は容易 であるが肌目は粗く、したがって仕上げ面は一般にあまり良くない。乾燥の際に狂いが出るこ とがある。材はあまり強くないが水湿に対する抵抗性がありクリに次ぐといわれている。 材は独特の色であるがくすんだ暗い色であまりきれいとはいえない。家具材、建築内装材にも 一応用いられるが上級ではない。ただ色と木理がややクワに似ているので鏡台、針箱、茶箪笥 などにクワの模擬材として使われる。そのほか各種器具材(盆などの旋作物、杓子など匸経木、 寄木、薪材としての用途かおり、また北海道では合板の心材としても用いられる。水湿に強い ので枕木としての用途があり、建築では土台、流し場の板などに使われることがある。                                       (平井信二) K06E W607935 かなえ書房@ 木の事典 キハダ 」 K16EW617935 キハワ 樹姿 キハダ 樹姿 午ハワ 樹肌     かなえ書房@ 木の事典 キハダ 、 K26EW627935 ギハダ 若本の樹肌 ギハダ 壮齢本の樹肌 ギハダの植栽(東京・   泄ス薬用植物園)       かなえ書房@ 木の事典 キハダ ・ K36E W637935 ギハワ 枝葉 オオバノギハダ 枝葉 かなえ書房@ 木の事典 キハダ K46E W647935 ヲ 横断面(×眄) 材の構造 放射断面(×・)   接線断面(×フO)    (菅野国男) かなえ書房@ 木の事典 マカンバ              召a maximowicziana Regel マカンバの名称 本材の方でマカンバといっているものは植物学の方ではウダイカンバといわれているもので、学 名は召a maximacz iana R EGEL (べ千ュラ・マキシモウイッチアーナ)である。カンパ(カ バ)の代表としては一般にはシラカンバ日a P/丱hylla SUKATCHEV var. japonica H ARA  (ペチュラ・プラテイフイラ・ヤポニカ)の方がなじみが深いが、本材の方面ではカバといえ ばまずこのマカンバをさす。 したがって漢字には真曄、樺が使われ、また二れをもじった俗字、 糀が用いられることがある。ウダイカンバのウダイは鵜松明(うだいまつ)の意味で、樹皮に 油脂分か多くてよく燃えるので鵜飼用のたいまつに使うということからきている。 また樹皮の 外観からサイハダカンバという別名があるが、筆者にはこの感じはあまりぴったりとこない。 なお植物の方でマカンバおa昂回心鬲KO IDZUMI (ペチュラ・二コエンシス)として小泉 源一博士によって記載されたものは、日光山中などにある葉が細長く側脈数が多いダケカンバ の1変衽ナガバノダケカンバおula ermani C H AMI S S 0 var. ja即心ゥK OIDZUM! (ペチュラ ・エルマニ・ヤポニカ)のことで、木材の方でいうマカンバと全く違っているのでかなりまぎ らわしい。 この新種記載の時に方言が聞き誤られたのではないかとも想像される。 マカンバに正確な英名をあてる場合にはJapanese red bi rchを用いる。     (平井信二) K56E W657935 かなえ書房@ 木の事典 マカンバ              召da maximowicziana Regel 畆 マカンバの概要 マカンバはカバノキ抖に属する落葉高木で、高さ30m、直径1mくらいまでになるが、このよ 列こ大きいものはきわめて少なくなった。樹幹は広葉樹のうちではすこぶる通直な方で、枝下 長く樹幹の斷面も正円に近く、見るからに形質が良い感じのものである。柆1皮は灰白色、灰褐 色、帯黄褐色などを呈レだいたい平滑で横方面に紙状にはげ、はっきりした横長の皮目があ ってサクラにやや似ている。葉は日本産のカンパのうちでは‥番大きく、長さは8〜15ゥ、広 卵形または卵円形、先は短く尖り基部は心臓形になり、だいたい無毛であるが若本の葉にはビ ロードのような毛が多い。葉縁に先端が腺状突起で終わる不規則な細かい鋸歯かおる。5月頃 開花し穂状の雄花序、雌花序がそれぞれ3、4個ずつ出て花をつける。9、10月頃に雌花序が 成熟し、3〜7Cmの果穂になって下垂する。 南千島([玉|後島)、北海道から本州北中部の温帯に分布匸肥沃な日当りのよい地に生ずる。 裸地や森林が破壊された処に先駆して生えてくるいわゆる陽樹である。マカッバは北海道産広 葉樹材の代表的なものの1つで、蓄積はかなりあるが、樹木としての形質が良く材質がすぐれ ているため、戦時中は軍用材として、また戦後は合板用材として乱伐されたので、現在では材 質良好のものをまとめて得ることはむずかしくなっている。          (平井信二) K66E W667935 かなえ書房@ 木の事典 マカンバ 。             召da maximowicziana Regel 材の組織と性質 辺材は白色、心材は淡紅褐色でその境はおおむね明瞭である。年輪はやや不明瞭、肌引ま緻密 ・均質で、やや硬質の散孔材の代表的なものである。顕微鏡的な材の構成要素は道管、仮道管、 真正木繊維、柔組織、放射組織で、仮道管は顕著でない。基礎組織である真正本繊維の間に直 径0.05〜0. 2 mmの比較的小さい道管がばば一様に分布しており、道管要素は両端に傾斜した階 段せん孔をもっていて、その階段は糸状で4〜16個ある。柔組織には年輪の境に出る1細胞層 のターミナル柔組織と、真正木繊維中に散在する柔細胞が少数あるに過ぎない。真正木繊維は 長さ1. 5 mm程度で広葉樹材のうちでは長い方に入る。放射組縅は1〜5細胞幅であまり目立た ず、すべて平伏細胞からなる同性である。 材の気乾比重は0.67程度で、やや重硬、また強靭であるが、切削その他の加工は困難でなく乾 燥も比較的容易であり、材が緻密なため接着性もよく塗装仕上げも良好である。 北海道の本材業者の間でメジロカンバと呼ばれているものがある。一般に辺材の割合が多いも のをこういっているが、また材が軟かく樹皮が白っぽいともいう。取引の上で通常の心材が多 いマカンバと値段を区別する場合がある。従来これは生立地の条件からきた樹木として成長の 仕方の違いによるもので植物学的な違いではないとされてきているが、佐藤美夫博士、楮熊泰 三氏などはマカンバとシラカンバの自然雑種ではないかといっている。    (平井信二) K76E W677935 かなえ書房@ ・冫 木の事典 マカンバ 「             召a maximowicziana Regel 材の利用 樹木としての形質がよく欠点が少なく、また材は緻密・均質で強度が大であるため、各方面の用 途に広く賞用される。家具材、建築「人」装材、フローリング、敷居、ドアーなどの洋風建具材、 車両材、船舶材、強度を必要とする各種器具材、とくに紡績用木管材・靴木型材・ミシンテー ブル、機械部材、スキー材、ピアノのハンマー・外装などの楽器材、キャビネット材などがあ げられ、また合板用材のうちではマカンバは特別の位置にある。その他パルプ材、薪炭材など としても有用である。 マカンバ材、とくに北海道産のものが利用され始めたのはサクラの代用材としての感覚であっ たが、明治末年頃からの織機材と木管材への利用から始まり、高級楽器材、家具材などを経て、 戦時中は航空機、船艦、車両などの車需用材の最も重要なものとなって、良材が伐りまくられ たものである。現在家具や建築内装の方面でサクラといっているものはこのマカンバが多く、 本当のサクラ属Pγな凡゛&8 (プルヌス)の材であることはほとんどない。なお、わが国の中部以南 では同じカバノキ属のミズメ召etula grossa S IEB皿D et ZじCCARIN匸ベチュラ・ダロッサ) の材をサクラとしているのが普通である匸その他のカンパ類、すなわちダケカンバBe tula にrnani Ch.AMISSO (ベチュラ・エルマニ)やシラカンバ召a釧丱的I la SlJKATCHEV var. プ叩皿加aH八八(べ千ュラ・プラテイフイラ・ヤポニカ)、また同じくカバノキ科であるが別属 のアサダ0吋エヘゾ叩心にIS八尺(JXエ(オストリア・ヤポニカ)までサクラとされていることが 多い。                                     (平井信二) K86EW687935 かなえ書房@ 木の事典 マカンバ 」             召計a maximowicziana Regel 合板と硬化積層材 現在のマカンバ材の利用のうちで最も重要なものは合板である。カバ合板の初期にはその強度 が大きいことから輸出組立て茶箱としてのベニヤチェストが多かったが、その分はその後ほと んどブナになってしまった。普通の大板としてのカバ合板はセン合板、シナ合板、ナラ合板と ならんで一時輸出合板の花形であり、現在もその声価は落ちていない。 しかし原本が苦しくな ってきたため、本当のマカンバだけでは需要をまかないきれず、この頃はダケカンバ、シラカ ンバのいわゆる雑カバが相当大量に使用されている状態である。カバ合板は装飾的目的によい だけでなく、材が強く接着も良好であるから構造用合板としても第1位のものである。事実戦 時中に木製航空機の外板、各所の当板など強度を要する処に用いた合板はマカンバ合板を主体 とし、ブナ合板をその代用材とした。 もう1つ戦時中にマカンバの特殊用途であったのは硬化積層材(強化木)である。これは厚さ 0.5〜1mmの薄いベニアにフェノール樹脂を滲透させ、これを多数積層して1当り150〜200 オの強圧と140七内外の熱を加えて成型したものである。素材の比重が0.7くらいなのにくら べ1.4程度になり、強度も2倍から3倍くらいのものにして、高性能のプロペラ、翼桁材など 最も強度が必要な部材に作り、これをもとにして木製航空機が試作された。これにも代用材と してブナを使うことが試みられたが、その強度はマカンバの80%程度に過ぎなかった。                                       (平井信二) K96E W697935 かなえ書房@ 木の事典 マカンバ 、 K07E W707935 マカンバ 樹咨 マカレバ 樹肌 マカレバ 若本の林       かなえ書房@ 木の事典 マカンバ ・ K17EW717935 マカンバ 樹林 マカンバ 枝葉 かなえ書房@ 木の事典 マカンノく K27E W727935 横断面(×50) 材の構造 断面(×70)   接線断面(×・    (菅野国男) かなえ書房@ 木の事典 ダケカンバ                召a ermani Chamisso ダケカンバの概要 ダヶカンパはカバノキ科の落葉高木で、学名は召aeァフnani C HAMIS SO (ベチュラ・エル マニ)である。漢字は一岳樺と書き、一ちソウシカンバし簡氏樺)という。その意味は樹皮が滑 らかで薄くはげこれに文字が書けるということらしい。北海道ではシラカンバを俗にガンピと いうのに対してダケカンバをドスガンピといっている。 高さ20m、直径は最人1mくらいになるが、そんなに大きいものはあまりない。 同じカンパ とはいいながら、マカンバでは樹幹の断面はふつう正円に近く、真っ直ぐで曲がらないのに対 し、ダケカンバの断面形は凹凸があり曲がりがあって形質が遙かに悪いのが一一般である。 樹肌は若木では平滑で横長の皮目があってシラカンバやマカンバによく似ているが、シラカン バばど白くなく灰白色から灰褐色、黄味がかったもの、少し赤味がかったものなどがある。老 木になるとおおよそ灰褐色で縦に裂け目が入って厚い片になってはげてくるのでオニカバの俗 称もある。葉は広卵形または三角状卵形で長さ5〜10cm、幅4〜7Cm、先端は鋭尖、基部は円 形から浅い心臓形である。葉縁には不規則な細かい鋸歯がある。 5、6月に開花し穂状の雄花 序を下垂レ雎花序は柄があって上向きにつく。 9、10月に雌花序が果穂に成熟匸長さ2〜 3. 5 cm、幅0.8〜1Cmの円筒形で直立している。               (平井信二) K37E W737935 かなえ書房@ 木の事典 ダケカンバ                召a e rman i C HAMIS SO 高山の風物 ダケカンバの分布は大陸東北部、すなわちアムール、カムチャッカ、朝鮮から樺太、千島を経 て北海道、本州北部・中部、四国にわたっているが、わが国の中国地方には見られない。亜高 山帯の代表的な樹木の1つで、本州中部の山では海抜1,50 0 mくらいから上の方に現われ、コ メツガ、シラベ、アオモリトドマツなどの針葉樹林に対して陽地がかっか処ではこのダケカン バが特徴的である。時には前記針葉樹の前生樹として老木が混生していることもあり、さらに 樹木限界までいって高山帯に入り、灌木状となり独特の景観をあらぬしている。 葉の形や性質に変化が多く、植物学的にはいろいろな変種があげられている。そのうちアカ力 ンバ召a ermani C HAMISSO var. subco砲吋a KOIDzUMI(ベチュラ・エルマニ・スブコル ダータ)は葉の基部が心臓形になるもので、高山帯にあるものとされているが、基本形のダケ カンバとの境目はあまりはっきりしていない。そのほか、葉の長いナガバダケカンバ召a ermani C HAMISSO var・ ノ叩onica K OIDZUMI (ベチュラ・エルマニ・ヤポニカ)、葉に切れ込 みがあるキレハダケカンバ 召a ermani C H AMI S S 0 var. incisa KOIDZUMI (ペチュラ・ エルマニ・インキーサ)などがある。 ダケカンバ、マカンバ、シラカンバをあわせたカンパ類の蓄積は北海道、本州北中部にわたっ て相当多く、そのうちでもダケカンバが大きい部分を占めている。ただダケカンバは伐出に不 便な高山地方にあり、樹としての形質もマカンバにくらべて遙かに劣っているので、これまで あまり重要な樹とは見られなかった。                    (平井信二) K47E W747935 かなえ書房@ 木の事典 ダケカンバ 。               召計a ermani Chamisso 材の組織、性質と利用 材そのものの性質はほとんどマカンバと同様と考えてよい。 しかし樹幹がマカンバのように素 直でないので、マカンバよりも木理が複雑になり繊維の走向も乱れているものが多い。またこ ぶ、腐れなどの欠点もより多く出ると思われる。辺材は白色、心材は淡紅褐色から淡褐色で、 年輪はやや不明瞭、肌目は緻密・均質である。顕微鏡的構造もばとんどマカンバと違わない。 すなわち基礎組織は真正木繊維であるが、その間に径の小さい道管がほば一様に分布しており、 柔組織としては年輪の境にある1細胞層のターミナル柔組織と、真正本繊維中に散在し個立あ るいは2〜3接線方向に接続した少数の柔細胞とがある。放射組織は接線方向に1〜4細胞幅 の同性のものである。 材の気乾比重は0.68程度で、ふつうマカンバよりやや重硬であるがあまり甚しくは違わない。 材の加工性もばとんどマカンバ同様と考えてよいが、乾燥では狂いが生じやすい。 材そのものの性質がマカンバと同様であるので良い形質の樹からの材はマカンバと同じく使う ことができる匸また区別がつかない。すなわち家具材、建築内装材、フローリング、車両材、 各種器具・機械材、合板材、パルプ材、薪炭材などに用いられるが、ことに合板の場合マカン バがずっと少なくなっているのと、奥地の開発が進んできたことで、最近のカバ合板にはダケ カンバを使うものが相当多くなっており、シラカンバも一部使われていると思われる。原本の 方ではマカンバに対しこれらをザツカバと称している。            (平井信二) K57EW757935 かなえ書房@ 木の事典 ダケカンバ K 67 E W767935 ダケカンバ 樹姿 ダケカンバ 樹幹 ダケカンバ樹林  (富士山五合目)      かなえ書房@ 木の事典 ダケカンバ 」 K77EW777935 ダケカンバ 若本の樹肌 ダケカンバ 壮齢本の樹肌 フヶカンパ 高齢本の樹肌       かなえ書房@ 木の事典 ダケカンバ 、 K87EW787935 ダケカンバ 枝葉 ダケカンバ 丸太 ダケカンバ 丸太 かなえ書房@ 木の事典 ダケカンバ                  横断面(×50) (プレパラート提供:東京大学森林植物学教室) K97EW797935 材の構造 放射断面(×70)   接線断面(×70)     (菅野国男) かなえ書房@ 木の事典 シラカンバ         召a P/卯hylla S UKATCHEV var. y叩onica Hara シラカンバの概要 シラカンバ(白樺)はカバノキ科の落葉高木で、学名はいろいろに用いられていてその選択が 難しいが、一応召aが丱hylla. S UKATCHEV var. j叩onica H ARA (ベチュラ・プラテイ フイラ・ヤポニカ)をあてておく。このほ力ヽに召am四面hurica NAKAI(ペチュラ・マン ジュリカ)が使われることも多い。北海道、東北地方ではガンピ(雁皮)といっている。英名 は Japanese white b卜chである・ 高さ25m、直径は最大90cmくらいになるが、マカンバやダケカンバにくらべるとずっと短命で せいぜい80年くらいまでの寿命であるという。樹肌は真白に近いのが非常に特徴的で横長の皮 目があって薄くはげる。幼木では光沢ある赤味がかった褐色を示す。樹幹は比較的真っ直ぐで ある。葉は三角形に近い広卵形で、長さ5〜6cm、幅4〜6cm、先端は鋭尖頭、基部は広い楔 形から切形、浅い心臓形まである。碌にはやや不規則な二重鋸歯がある。葉の下面はふつう腺 点が分布していてちかちかと光る。 4〜5月に新葉とともに開花、1〜2イ固の雄花序は尾状で 下垂し、これより小形の雌花序も尾状で下垂する。9〜10月に円筒形で下垂する果穂に熟ずる。 このカンパも葉の形や性質に変化が多く、例をあげると葉の基部が広い楔形に止まるものをェ ゾノシラカンバ召αが丱的lla S UKATCHEV var. kamtschica HARA (ベチュラ・プラ テイフイラ・カムチヤテイカ)といい、ダケカンバとの雑種で中間の形のものを別種にしてオ クエゾシラカンバ召aoscensis KOMARov(ベチュラ・アバチェンシス)といっている。                                       (平井信二) K08E W807935 かなえ書房@ 木の事典 シラカンバ        召gyphylla S UKATCHEV var・ j aponica Hara 白樺の林 シラカンバの分布は本州北部・中部と北海道であるが、本州裹日本側には非常に少なく、また 不思議なことに宮城県、山形県にはほとんど見られないということである。基本種の召a P/卯hyl la S口(八TCHEV (ベチュラ・プラテイフイラ)というのは東アジアの北部に広く分布 するものを包括したもので樺太、千島、朝鮮、満州、支那、カムチャッカ、ウスリー、シベリ アなどにわたっている。葉の形や有毛の程度、種子の翼の形、樹皮の状態などはいろいろと変 化し、また区別がはっきりしないように連続していて、いくつかの変種が報告され、マンシュ ウシラカンバ、1名コバノシラカンバ召a mandshu元ca NakaI (ベチュラ・マンジュリカ) とされているものなどもその1形である。マカンバ、ダケカンバとあわせたカンパ頬の蓄積は 相当大きいが、そのうちではシラカンバは少なく、樹の径も大きくない。 樺といえば材を扱う方面ではマカンバが本命であるが、一般にはシラカンバの方が遙かによく 知られている。それというのも本州中部の明るい高原の代表的な樹であり、その樹林は詩情豊 かで歌や詩に多くよまれてきた。明治から大正へかけての文学運動に「白樺派」の名が輝かし く残っている。最近は長野県の木にも選定された。 ヨーロッパの代表的なカンパであるオウシュウシラカンバ召a verrucosa E HRHART (べ千 ュラ・ベルコーサ)は囗本のシラカンバにきわめて近縁のものである。     (平井信二) K18EW817935 かなえ書房@ 木の事典 シラカンバ 。        召αyphylla S UKATCHEV var・ j叩凹加a Hara 丶 材の組織、性質と利用 材はマカンバと同様であるが、大径木が少なく樹としての素性もマカンバのように良くはない。 辺材は白色、心材は淡褐色から淡糺褐色を呈し、マカンバにくらべると心材の形成がずっと少 なく、したがって白色材の部分が多い。正常な材の顕微鏡的な構造もマカンバとほとんど同様 でとくに記すことがない。ただ柔細胞が塊状に集まり材中に濃色の斑点として散在しているも のを髄斑といって不正常な組織であるが、これがシラカンバ材に現われることが多い。材の気 乾比重は0.64程度でふつうマカンバより少し軽軟であり、腐れが入りやすく、また狂いも出や すい。 良質の材はマカンバと同じように利用できるが、樹の素性が良くなく腐れが入るため、一般に 上等の材とはされず、昔はほとんど薪炭材とちよっとした器具材や玩具材に使われたのにすぎ ない。 シラカンバ材が本格的に利用されたのは大正初期に紡績用木管としてであったが、これ も大きな部分はブナに移った。近年になってパルプ材としての評価が高まって量的にこの用途 に用いられるようになり、また辺材部分が多い白色材の特色をいかしてパーティクルボードの 化粧用表層材に最も適当とされている。良質のものは合板用に使われるほか、各種の器具材、 建築内装材、家具材などにも用いられる。特殊な使い方では白い樹皮をそのままとした丸木柱 がある匸また高原地方のお土産、白樺細工は誰にもなじみが深い。      (平井信二) K28E W827935 かなえ書房@ 木の事典 シラカンバ 「 K38E W837935 シうカンバ 植栽林 シうカンバ 壮齢本の樹肌 シラカンバ 若本の樹肌       かなえ書房@ 木の事典 シラカンバ K48E W847935 シ⊃カンパ 花穂 シ⊃カンパ 花穂をつけた樹咨 かなえ書房@ 材の構造 、 木の事典 シラカンバ ’/          1.d川丿剔目口即   接線断面(×耶    (菅野国男) かなえ書房@ 放射断面(×70) 横断面(×50) K58EW857935 木の事典 ミズメ            召da grossa SIEBOLD et ZUCCARINI ミズメの概要 ミズメはカバノキ科の落葉高木で、学名は召a夕卵心S IEBOLD et Z Ucc八RINてベチュラ ・グロッサ)である。 ミズメに水目と当字をするが、その意味はなたで樹皮に傷をつけると水 のような透明な油がしみ出てくることによるという。 高さ20m、直径70cmくらいまでになる。樹皮が特徴的で暗灰色から黒褐色であるがサクラによ く似て横長の皮目力辟帽こなっている。老木ではその形がくずれて不規則な鱗片状にはがれるよ うになる。枝を折って鼻にもっていくと全くサロメチールそっくりの匂いがするので、一度か いだらちょっと忘れられない。葉は新梢に互生するが、それ以外では短枝上に2枚ずつ双生し、 葉柄にはふつう長い毛が生えている。長卵形から卵形で長さ5〜10cm、輻3〜6cm、先端は鋭 尖で基部は円形から浅い心臓形のものまである。碌にやや不規則な二重鋸歯がある。ふつう腺 点を分布していて、下面では主脈とそれから出た10〜15対の側脈に長い毛が生えている。雌雄 同株で、5月頃新葉とともに開花し、雄花は尾状花穂になって下垂し、雌花の穂は上向きにつ く。 10月成熟した果穂はほとんど柄がなく、楕円形から長楕円形、長さ2〜2. 5 cmである。 岩手県以南の本州と四国、九州(鹿児島県高隈山まで)の山地に広く分布している。他のカン パ類がほとんど北方系であるのに対し、これは南方系のもので関西以西にも割合に多く見られ る。ただしまとまって生じていることは少なく比較的散生している。なお東北地方の囗本海側 にはきわめて少なく、房総半島と伊豆半島にも見られない。         (平井信二) K 68 EW 867935 かなえ書房@ 木の事典 ミズメ             召吋a grossa SlEBOLD et ZUCCARINI ぜ・ ミズメの名称と方言 材が有用で、また分布が広いので各地でいろいろな名で呼ばれており、ミズメのばかにヨグソミ ネバリ、またはこれに似た呼び方が多い。以前にはヨグソミネバリはミズメとは別の種頬で学 名も召amげia SlEB〇ld et ZUcc八RINI (ペチュラ・ウルミフォーリア)をあててい たが、現在は全く同一とされている。 ヨグソミネバリの名はサロメチールの匂いに由来するが、 それほどいやな匂いとも思われない。アズサという方言も関東、中部などに多い。梓の字に対 応するものとしてのアズサはアカメガシワ舒/ぉy叩onicus MビロエE卜A RG. (マロートウ ス・ヤポニクース)(トウダイグサ科)とか、キササゲCpa ovata G.Don (カタルパ・ オバータ)(ノウゼンカズラ科)とかの説もあったが、白井光太郎博士が方言をもとにして、 古来梓弓にしたアズサはミズメであるとの考えを出してからこれが通説となっている。小泉源 一博士が葉の広いものをオオバミネバリ召a sdllenis K OIDZUMI (ベチュラ・ソレニス) という別種にし、人によってはアズサはこのものであるとするが、これも現在はミズメと同じ ものと考えられている。そのほか各地でミネバリという名があり、また近畿、中部ではハンサ というところも多い。 本材業者の間ではハザクラという名が使われた。材になってしまうと一般にサクラで通ってい て、少し正直にいえばミズメザクラということになる。本当のサクラ属Prび咫箟s(プルヌス) とは植物学的に何の関係もないのであるが、咐肌と材の様子がよく似ていることからきている ものである。いまでは家具などでサクラといっても本当のものはばとんどない筈である。                                       (平井信二) K78EW877935 かなえ書房@ 木の事典 ミズメ 。            召a grossa SlEBOLD et ZUCCARINI 材の組織、性質と利用 材はマカンバなどのカンパ類と同様であるが、マカンバにくらべると大径木にならず、樹幹の 形が悪く、また量的にまとまって出る二とが少なくなっている。散孔材で辺材は黄白色、心材 は經褐色である。年輪はやや不明瞭で肌目は致密である。マカンバにくらべると木理が乱れて いることが多い。材の顕微鏡的構造も他のカンパ類とほとんど同様で道管、真正木繊維、柔組 織、放射組縅の諸要素からなり、道管の径はマカンバより小さく0.02〜0.15mm程度である。材 の気乾比重の値としてあげられたものに0.72というのがあるが、一般にはマカンバより少し重 硬なものが多い程度であると思われる。 材質がマカンバに近いので、用途も同様であって、古来各地で有用な材の1つであった。道具 の柄、漆器素地、紡績用木管などは割合特色ある用途であったが、現在の一般的用途をあげる と家具材、器具・機械材、フローリング・敷居・内装などの建築材、楽器材、パルプ材、薪炭 材などである。かつで使われた器具に類する細かいものの用途では椀、盆、ガラスの木型、靴 木型、三味線の棹、琵琶の胴、算盤(そろばん)の枠、櫛、洋傘の柄、機械箱、写真暗箱など があってなかなか多彩である。                         (平井信二) K88E W887935 かなえ書房@ 木の事典 ミズメ K98EW 897935 -・呻 ミズメ 樹咨 ミズメ 樹咨 かなえ書房@ 木の事典 ミズメ 」 K09E W907935 かなえ書房@ 木の事典 ミズメ K19EW917935 横断面(×50) 材の構造 放射断面(×70   接線断面(×ア○    (菅野国男) かなえ書房@ 木の事典 カバノキ属の樹木 「 l 外国のカンパ カバノキ属召α(ペチュラ)は北半球の温帯から亜寒帯にかけて主要樹種の1つであり、約 50種くらいあるといわれ、世界的に見て有用なものが多い。わが国では大木性で広く分布レ 量的にも多いマカンバ、ダケカンバ、シラカンバ、ミズメのほかに、オノオレカンバ召a sdd山R H:GE:L (ペチュラ・シュミッティー)、ヤェガワカンバ(1名コオノオレ) Betula 加nバca P ALLAS (ベチュラ・ダブリカ匸ウラジロカンパ(1名ネコシデ)召da coエ/げ Rh:GEL et M八XIMOWICZ (ペチュラ・コリリフオーリア)や低木性のものまで数種類がある。 このうちオノオレカンバは材がとくに重硬、強靭で気乾比重0.90〜0.95に達する。 カバノキ属の樹木は英名をbirch、独名をBirkeと呼び、その材は北欧諸国、北米、東アジア でわが国同様種々の用途に利用されている。 ヨーロッパ産の主要な種類はオウシュウシラカン バ(common birch, silver birch, white birch ) Beta verrucosa E HRHART (ベチュラ・ ベルコーサ)でフィンランド、ソ連のおもな合板原木である。アメリカ、カナダには数種類あ って、sweet birch ( cherry birch )召a加a Linnaeus (ペヂュラ・レンタ)、yellow birch:召daZea MlCHAUχ(ペチュラ・ルテア)、paper birch : 召a即万元八m Marshall (ペチュラ.パピリフェラ)、red birch ( black birch ) Beta nigra LINNAEUS  (ベチュラ・ニグラ)が有用な材を提供する。東アジア大陸では朝鮮、満州、支那北部産の卜 ウカンバ召a chinensis MAXIMOWICZ (ベチュラ・キネンシス)が代表的である。                                       (平井信二) K29E W927935 かなえ書房@ 木の事典 カバノキ属の樹木  K 39 EW 937935 ヤエガワカレバ 樹晏 ヤエガワカンバ 樹肌 ヤエカロカンパ 枝葉        かなえ書房@ 木の事典 カバノキ属の樹木 。     オウシウシブガンダ 樹肌 K49E W94-7935    レッド・バーテ (戸メリカフロハダカンバ)樹肌 オウシウシ⊃カンパ 枝葉と果穗          かなえ書房@ 木の事典 カバノキ属の樹木 K59E W957935 スィート・バーテ(尸メリカミズメ) 樹姿 かなえ書房@ 木の事典 カバノキ属の樹木」    スイート・バーチ 壮齢木の樹肌     イエロ K69E W967935 レッド・バーテ 枝葉             オノオレカンバ 枝葉 チ(キハダカンバ) 枝葉        ウラジロカンパ 枝葉                            かなえ書房@ 木の事典 オニグルミ            Juglans  sieboldiana Maximowicz クルミの名称 オニグルミはクルミ科に属匸学名は一般にJuglans sieboldiana M AX川owlcz(ユダラッス・ シーボルデイアーナ)を使うが、北村四郎博士は近縁のマンシウダルミJuglans mandshu.元白 M八XIMOWIC z (ユグランス・マンジュリカ)の亜種(種のうちの区分で地域的に分布が違うも のが多い)であるとしてJuglans mandshurica M AχIMOWICZ subsp. siebdiana K ITAMURA  (ユグランス・マンジュリカ・シーボルデイアーナ)を用いている。ふつうクルミといえばこ のオニダルミのことで、漢字には胡桃が使われる。英名にはJapanese walnutを用いる。 クルミの語原は黒実、あるいは中国から渡来した果実という意味の呉実という説もあるが、く るくるまわる丸い実の意味だという説の方がふさわしいように思う。オニグルミのオニは核に 皺かおる様子からきている。国内各地の方言ではクルミというのが圧倒的に多いが、クルビも よくいかれている。そのほか似た発音のダルミ、クロビ、グルメなどがあり、ヒメグルミやサ ワグルミに対応してかオトコダルミ、ホンダルミという呼名もある。 クルミを来る身にもじって「夏山の裾野にしげるくるみはら くるみいとぶな行ひてあふらん」 という新撰六帖家良の歌などもある。俳句では胡桃は秋の季題で「夜嵐や破風(はふ)を打ぬ く鬼胡桃」(探梅)などかおるが、また枝に着いたままの緑色の青胡桃は夏の季題で「山の雲 通へばさわぐ青胡桃」(青邨)などはよくその情景を写している。       (平井信二) K 89E W987939 かなえ書房@